【夏へのトンネル、さよならの出口】感想 疾走感溢れるラノベ!鍵は選択と決別
・過去を引きずっている人
・未来の選択を迫られている人
・普通になりたくないと思う人
・疾走感のある小説が好きな人
・元気なしなし度が”けむし”、”さなぎ”の人
『夏へのトンネル、さよならの出口』評価
感動する :[star rating="2"]
共感する :[star rating="3"]
タメになる :[star rating="4"]
背中押される:[star rating="2"]
読みやすさ :[star rating="3"]
読んでほしい人:けむし、さなぎ
疾走感のある良いラノベでした。ラノベって聞くと敬遠してしまう人もいるかもしれませんが、この作品は良い意味でラノベっぽくありません。
萌え萌えの女の子とイチャイチャする展開があるわけでもない。
そもそもラノベ特有の挿絵もほとんどありません。
性別を問わずに楽しめるのも、本作の魅力の一つです。
もはや普通の小説となんら変わりません。
ただ私個人としては、主人公以外のキャラクターの感情の移り変わりがもう少し分かり易いと良いかなぁとは思いました。急にキャラ変わったなぁって思ったりしたので。
まぁそういうことはとりあえず置いておきます(笑)
今回も元気なしなしの人にどのような点がオススメなのかご説明させてください!
説明の前に、観てほしい人の”けむし”とか”さなぎ”ってなんの話?
どれだけ元気がないのかの度合いです。
詳しくは『ブログの詳細』をご覧ください!
それでは、作品をご紹介していきます!!
『夏へのトンネル、さよならの出口』概要
作品名:夏へのトンネル、さよならの出口
著 者:八目 迷
イラスト:くっか
出版社:ガガガ文庫
発売日:2019年7月18日
第13回小学館ライトノベル大賞でガガガ賞、審査員特別賞を受賞。
このライトノベルがすごい!2020で文庫部門で第9位。
『夏へのトンネル、さよならの出口』あらすじ
「ウラシマトンネルって、知ってる?そこに入れば欲しいものがなんでも手に入るんだけど、その代わりに年をとっちゃうのーー」。そんな都市伝説を耳にした高校生の塔野カオルは、偶然にもその日の夜にそれらしきトンネルを発見する。ーーこのトンネルに入れば、五年前に死んだ妹を取り戻すことができるかも。放課後に一人でトンネルの検証を始めたカオルだったが、転校生の花城あんずに見つかってしまう。二人は互いの欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶのだが……。かつて誰も体験したことのない驚きに満ちた夏が始まる。
出典:『夏へのトンネル、さよならの出口』八目 迷
一応言っておくと、カオルは男子です。
『夏へのトンネル、さよならの出口』オススメする理由
まずは本編のネタバレにならないオススオメポイントから。ところどころにグッとくるセリフがあったので、ご紹介させてください。
グッとくるセリフ
「失うことが怖くて得ることに対しても臆病になってたら、お前、いつか空っぽの人間になるぞ」
出典:『夏へのトンネル、さよならの出口』八目 迷
これは友人の加賀から主人公のカオルに発せられた言葉です。私はこの言葉を聞いて、「リスクを避け続ける人生にも、リスクがある」ということを感じました。
現実問題、失うことも新しいことを得ることもリスクがあって、恐怖がつきまといます。
結果として、今の場所から動けないなんてこともあるかもしれません。
ただ、恐怖に負けて自分を押し殺して生きていると、いつか空っぽの人間になってしまうのかもしれません。
つまり、生きていく中では勇気をふり絞らないといけない瞬間があるんだと思うんです。だから、勇気を振り絞りたいときには先ほどのセリフを思い出してください。
「川崎も自分のルールを作ってみたらいいんだよ。別になんでもいいから。自分で決めたことを、最後まで貫く。そうすれば、最初は生きづらさを感じるかもしれないけど、理想の自分に近づけるんじゃないかな」
出典:『夏へのトンネル、さよならの出口』八目 迷
これはヒロインの花城からクラスで悪ぶっていた女子生徒 川崎に向けられた言葉です。転校生で孤高の存在である花城の考え方がよく現れています。
最後まで貫くと聞くと、ハードルが高いようにも思えますが、理想に近づくということはやはり覚悟が必要なんでしょうね。
私個人としては貫く貫かないはひとまず置いておいて、「自分のルールを作る」というのは真似してみようかなと思っています。
さて、次からは多少ネタバレがあります。ご覧になる際はお気をつけください。
ネタバレは読みたくないという人は、次の章へをクリック/タップしてください。
カオルの決別
本来、カオルは花城と一緒にウラシマトンネルに挑むつもりでしたが、なんやかんやあって一人でトンネルに入ります。そして死んでしまった妹を取り戻すためにひたすら進み続け、見事にトンネルの先で妹のカレンと再会を果たします。
カレンが幻かどうかはわかりませんが、カオルはそこで共にひと時を過ごします。
そしてカオルはカレンから「今を生きて」と促され、”あるもの”をもらいます。
ここが私の選ぶ感動シーンです。カオルが過去に決別し、現実を生きる決心をする。そのきっかけをくれるカレンとのやり取りは読み応えがあります。
私たちも”今”という時間を生きなくてはいけませんね。
花城の選択
花城には漫画家になるという夢がありました。
そしてウラシマトンネルに挑む直前に、自作の漫画が編集者の目に留まります。このことでウラシマトンネルに挑む決意が揺らいでしまいます。
結局、花城はカオルに促され、ウラシマトンネルに挑むことはせず、漫画家の夢を目指します。
対してカオルは一人でウラシマトンネルに入っていったわけです。
花城は高校を卒業してもなお努力を続け、自身の漫画を出版、そして見事完結を迎えます。それだけの歳月が経ってもなお、カオルは行方不明のままでした。
そこで大人になった花城が下した選択が私はとても好きです。その時の言葉を一部抜粋します。
二兎を得るには、二兎を追うしかないのだ。立ち止まっていたら何も捕まえられない。
出典:『夏へのトンネル、さよならの出口』八目 迷
ここで言う二兎とは”カオル”と”漫画家の夢”のことです。
高校時代の花城は、カオルに説得されたこともあり、カオルと一緒にウラシマトンネルに入ることを諦め、漫画家の夢を選びました。
本人もきっとその選択自体を後悔してはいないと思います。かと言って、カオルのことを諦め切ることもできませんでした。そして、大人になって漫画家になる夢を叶えた花城は、カオルを探すためにウラシマトンネルに入ります。
このシーンを見て、私は”選択”のことを考えました。
何かを選ぶときには何かを失うことは避けられないと思っていました。でも花城の行動を見ていると、何かを選ぶときは何かを失うのではなく、一旦寝かせているだけなんじゃないかと思えてきたんです。
つまり「今はこれを全力でやろう。もう一つの選択肢はとりあえず置いておこう」という考え方です。
もちろん、高校生の花城はそんな中途半端な気持ちで漫画家を目指してはいません。ただ、結果として二択の両方を選ぶことになったわけです。
もしみなさんが二者択一で迷っていたとしても、片方を必ず諦めなくてはいけないというわけじゃないはずです。なので、きっとそこまで思い詰めなくても大丈夫なんですよ。
『夏へのトンネル、さよならの出口』まとめ
夏へのトンネル、さよならの出口とは…