【星に願いを、そして手を。】感想 夢をテーマにした青春小説
・夢を追っているはずなのに、どこか虚しい人
・夢を諦めた人
・夢を諦めたことを後悔している人
・元気なしなし度が"さなぎ"の人
夢にまつわる小説。
生々しいくらい夢をリアルに描いてます。
『星に願いを、そして手を。』評価
感動する :[star rating="2"]
共感する :[star rating="4"]
タメになる :[star rating="4"]
背中押される:[star rating="2"]
読みやすさ :[star rating="2"]
読んでほしい人:さなぎ
夢を追っている人、夢を諦めたことのある人は共感できる小説です。
そして宇宙を題材にしているので、宇宙雑学も増えます。
このブログの趣旨からは外れますが、こういった知識が増えるのも本の良いところですね。
ただ登場人物の多さや視点の移り変わりから読みにくさを感じる部分もあります。
さて、ここからは元気なしなしの観点から、この小説がどう良かったのかをご説明していきます!
説明の前に、観てほしい人の”さなぎ”ってなんの話?
どれだけ元気がないのかの度合いです。
詳しくは『ブログの詳細』をご覧ください!
『星に願いを、そして手を。』概要
著者の青羽さんは、なんと2000年生まれの現役大学生です。(2019年現在)
しかも今回ご紹介する『星に願いを、そして手を。』は、なんと青羽さんが高校二年生の時の作品でです。
あらすじ
中学三年の祐人は、いつも薫、理奈、春樹とプラネタリウムのある科学館で過ごしていた。宇宙に憧れる四人は似た夢を持ち、同じ高校に進む。だが、月日が経ち、祐人は逃げた。夢を諦めて町役場で働く彼は科学館を避け、幼馴染の三人をも避け続ける。ところが、館長の訃報を受けて三人に会うことに。そこで科学館の閉鎖を知り……。瑞々しい筆致で描かれる青春群像劇。第29回小説すばる新人賞受賞作。
出典:星に願いを、そして手を。
『星に願いを、そして手を。』感想
この小説のキーワードは”夢”です。
夢から覚めた人、夢を追い続けている人、夢に破れた人、夢を見つけられない人・・・。
色んな人の視点から夢に対する想いが書かれています。
致命的なネタバレにならない程度に説明していきます。
夢から覚めた人 祐人
本作の主人公の一人です。
祐人は宇宙関係の仕事を志しながらも、その夢から覚めてしまいました。
結果、今は町役場で働いています。
しかし、幼馴染と再会したことで再び宇宙との距離が近くなっていきます。
私はこの祐人の気持ちがよく分かります。
夢ってなんとなくでいいなら見れるんですよ。
こんなことがしたい〜とか、あんな場所に行きたい〜とか。
私もなんとなくでいいなら、宇宙飛行士や小説家にもなりたいなぁって思っていたこともあります。
祐人はもっと真剣に宇宙を志していたと思うけど…。
でも、大抵の人は夢から醒めてしまうんです。
やりたいという気持ちを持ち続けることってすごく難しいんです。
そして気持ちをキープできなくなると、また例のごとく自己嫌悪に陥るわけです。
自分には夢を見る資格はないんだなぁと思ってしまうんです。
もし私と同じようなことを思ったことがある人は、次のセリフにグッと来るかもしれません。
「夢を見るのが苦手なら、頑張って見るしかない」
出典:星に願いを、そして手を。
このセリフを読んで、まずは自分みたいに頑張らないと夢を見続けられない人がいるんだと安心しました。
そして、そんな私たちにも夢を見る権利はあるんだと思えました。
むしろ、頑張らずして夢を見続けられる人の方が稀なのかもしれませんね。
夢を追い続ける人 理奈
これまた主人公の一人。
祐人とは幼馴染であり、元恋人です。
夢から醒めた祐人とは対照的に、今でも大学院生として宇宙の道を進んでいます。
一見すると、自分の夢に向かって真っ直ぐ進んでいて、かっこいい印象を受けます。
しかし、本人からすると決して誇らしいものでもないみたいなんです。
理奈の印象的なセリフがこちら。
「ずっと走り続けていたら、なんで走ってるか分からなくなっちゃった」
出典:星に願いを、そして手を。
このセリフはすごくリアルだなぁって思いました。
夢を追い続けていても、「どうしてこんなに頑張ってるんだっけ」と急に白けた気分になったりします。
夢というと想像しにくいかもしれませんので、ゲームでたとえてみます。
あなたは流行りの携帯ゲームにハマっています。
毎日のログインボーナスはもちろん、イベントがあれば必ずこなしています。
そんなときにふと「あれ?何のために毎日ゲームやってるんだっけ?」と思う感覚です。
そうして急に気持ちが冷めてしまいます。
とはいえ、夢を持たない人からすると、夢に向かって進んでいる人は輝かしく見えます。
でも、それは裏にある努力や苦しみが見えないからなんですね。
つまり、夢を持つのも大変ですが、夢を持ってからも大変なんです。
理奈が今後、夢に対してどのように想いを寄せていくかは、ネタバレにもなるので小説をお読みくださいね!
夢を持てない人 直哉
直哉は祐人たちが子供の頃から通っていたプラネタリウムの館長の孫です。
祐人たちが二十代前半であるのに対して、直哉はまだ中学生です。
そんな直哉も主人公の一人です。
直哉には明確な夢がありません。
そんな直哉は祐人たちと事件に巻き込まれることで、次第に夢を持ちたいと思うようになっていきます。
しかし、夢を持つと言っても簡単にできることではありません。
現に直哉も夢中になれることを探しますが、パッと思いつきません。
そんな直哉に対して、祐人と幼馴染の春樹はこんなことを言います。
「有意義な毎日じゃなくて、楽しい毎日を送ればいいんだ。少しの自覚と興味を持って周りを見渡せば、世界はだいぶ変わって見える」
出典:星に願いを、そして手を。
無理に夢を見つけるのではなく、まずはそのきっかけとなるものから探せばいいんだと思います。
このセリフは、どうしたらそのきっかけに出会えるかのヒントをくれますね。
このほかにも色んな人物が登場しますが、みんな”夢”にまつわる何かを抱えています。
詳しくは是非読んでみてくださいね。
夢は見るべき?見切りをつけるべき?
夢を志し続けるのがいいのか、夢から覚めて現実を生きるのがいいのか。
こんな悩みを抱えている人も多いかもしれません。
これは明確な答えのない問いです。
自己啓発本や偉人の名言を読むと、夢には挑むべきという言葉が多数見受けられます。
確かに、それも一つの答えです。
でもこれは偉人たちが本に残せるほど成功しただけであって、もし失敗していたら、その場合の教訓は私たちまでは伝わらないでしょう。
つまり、偉人たちがやった方がいいって言ったって、それはある種偏った意見であって、簡単に踏み出せないよというのが私の意見です。
こうして私たちは夢に対して悩むんです。
さて、本作において祐人は夢から覚めてしまっています。
そんな祐人は、自分の現状をこのように言っています。
「確かに後悔はしてる。(中略)でも、僕は今の自分を信じたい」
出典:星に願いを、そして手を。
後悔していることを認めて、その上で、今の自分を信じる。
これも夢に対する一つの答えだと思います。
偉人の夢に挑めという名言と優劣のつけられるものではありません。
もし、夢から覚めて、それに納得できない人がいたとしたら、この言葉を思い出して欲しいです。
夢から覚めたからこそ、手にしたものもきっとあるはずです。
『星に願いを、そして手を。』まとめ
まとめると、”星に願いを、そして手を。”は、こんな小説です。
・新進気鋭の若手作家が作り上げた宇宙の物語
なので、ストーリー自体の面白さに触れることはできませんでした。