こぷろぐ

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感動する本、映画、アニメをご紹介。うつ病との向き合い方も!

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ 感想・評価 "死にたい"気持ちに寄り添う小説

この記事はこんな人に読んでほしい

・死にたい気分で過ごしている人

・自殺を考えたことがある人

・自分の居場所が分からなくなった人

・久しぶりに小説を読みたくなった人

・元気なしなし度が”たまご”、”けむし”の人

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ ネタバレなし評価

感動する  :[star rating="2"]
共感する  :[star rating="5"]
タメになる :[star rating="2"]
背中押される:[star rating="4"]
読みやすさ :[star rating="5"]

読んでほしい人:たまご、けむし

感動というよりもそっと寄り添ってくれるような小説です。
そしてなんと言っても読みやすい小説です。

ストーリーのテーマやその読みやすさから、元気なしなし度が”たまご”、”けむし”の人に読んでもらいたいです。

生きづらさを感じていたり、死にたいと思ったことのある人なら共感できるはずです。

なお、基本的にはネタバレなしで紹介していきますが、オススメポイント③と④はネタバレありでご紹介しています。内容がパッと目に入らないように工夫はしてありますが、念のためお気をつけください。

それでは『天国はまだ遠く』のご紹介を始めていきます!

トラさん
トラさん

説明の前に、観てほしい人の”たまご”とか”けむし”ってなんの話?

こっぷ
こっぷ

どれだけ元気がないのかの度合いです。
詳しくは『ブログの詳細』をご覧ください!

ブログの詳細はこちら

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ 概要

作品名:天国はまだ遠く

著 者:瀬尾 まいこ
出版社:新潮文庫
発売日:2004年6月20日

著者 瀬尾まいこ

まずは著者の瀬尾さんについて、簡単にご紹介させていただきます。

1974年生まれ。
2001年に『卵の緒』で坊ちゃん文学賞大賞を受賞。翌年に同作で作家デビュー。
2007年には『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を受賞。
2019年には『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。
 
こっぷ
こっぷ

ちなみに、瀬尾さんは作家になる前、中学校で国語の教師として働いていたそうです。

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ あらすじ

仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう。自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

 

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ 感想【オススメする理由】

天国はまだ遠くのオススメポイント① 読みやすい

薄さ

良かった点でまず言いたいのはこれ、本の薄さです。
なんと文庫本にして181ページしかありません。
これは小説の中でもかなり薄い方に入ると思います。

しかし!

薄いにもかかわらず、ちゃんと面白いんです。

これこそ、この本をオススメする最初の理由です!

元気なしなしの人の中には、全てに対して無気力になっている人もいると思います。好きなことでもやる気が起きなかったり、友達とも連絡を取りたくなくなったり・・・。

そんな人にとって、本を読むという作業はかなり大変なものだと思うんです。

これは私の勝手な憶測ですが、瀬尾さんはこの本をそんな人にも手に取れるように、あえてこの量に抑えて執筆したんじゃないかなと思っています。

現に私も、久しぶりに読んだ小説にもかかわらず、一気に読み切れました。

本を読むのが億劫な人、普段は本をあまり読まない人も、もし興味があればトライしてみてください!

天国はまだ遠くのオススメポイント② 死にたいという気持ち

自殺

本作の主人公は自殺を決意したOLの千鶴です。
彼女が自殺をする場所として、とある田舎へと向かうところから、この小説は始まります。

私も行動には移していないものの、あんまり生きていきたくはないなぁと思っています。

そんな私からすると、主人公の千鶴に共感できる点がたくさんありました。

例えば、ここ。

仕事も人間関係もきっとたいしたことではない。それは十分わかっている。でも、それらは私には困難で重大であった。

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

ここはすごく共感しました。

自分に起きていることなんて、大したことじゃない。
むしろ、世の中にはもっと大変な思いをしながらも頑張っている人がいる。
そうやって頭では分かっていても、今、この苦しさは消えはしない。
そんなことを思って、結局頑張れない自分に、また苦しくなる。

私はいーーっつもこんなことを考えています。

でもこの小説を読んで、「同じことを考えている人がいる!」と少し救われた気持ちになりました。

 

他にも、ここ。

死んだらそこで終わり。全てを終えることができるのだ。他には方法がない。これを飲めば、あの日々から解放されるのだ。それを思えば、死ぬことなんて怖くないはずだ。

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

これは田舎の民宿で、千鶴が睡眠薬を大量に摂取して自殺を図る前のシーンです。

私は実際に自殺を試みたことはないので、自殺を決意した人のリアルな気持ちは分かりません。

ですが、"他に方法がない"、"これであの日から解放される"といった気持ちは理解できます。

長く続くトンネルから脱出するための出口を探している。でもそんなものはどこにもない。だからこれ以上進むのは、もうやめてしまおう。

自分はそう思ってしまう時も多いです。

そんな人にこそオススメできる本がこの『天国はまだ遠く』なのです。

天国はまだ遠くのオススメポイント③ 生きる

ここからはストーリーのネタバレを含みます。内容を知りたくない方は次の章はこちらをクリックしてください。

 

 

 

千鶴は自殺を図ります。
でもその自殺は失敗に終わりました。そして、一度踏み切った千鶴の自殺願望は消えていました。

 

さて、また生きていこう(というよりも死ぬのはやめよう)と思った千鶴は、民宿の主人でもある田村さんと、都会とはかけ離れた田舎生活を送ります。

舟で海に出たり、鶏小屋の掃除をしたり・・・。

そんな田舎生活の中で、グッときたセリフがあるのでご紹介します。

「今だけ怖いだけで、絶対にあんた、海に出てよかったって思うて」

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

これは田村さんに誘われて、早朝に千鶴が海釣りに出る直前のシーンです。

当初、千鶴は海に出るのをすごく怖がっていました。
そんな渋っている千鶴を見かねて、田村さんはこの言葉を言います。

ここでいう”海”とは”この世”でもあるのかなぁと思うんです。

つまり、"今は生きるのが怖いだけで、絶対にあんた、生きててよかったって思うて”と言い換えられるような気がするんです。

もちろん、生きていくのは大変です。

千鶴も海に出てすぐは船酔いで何度も吐いていました。

しかし、何度も吐いたその先にあったのは、物凄く綺麗な朝日でした。

それはいろんな困難を乗り越えたからこそ見れた朝日だと思うんです。

船酔いしているときは、やっぱり来なければよかったと後悔するかもしれません。

でも、そんな後悔の先にこそ、夜明けが待っている。
それが生きるってことなのかなと考えたりもしました。

 

さて、次の章はさらに重大なネタバレを含みます。繰り返しになりますが、もし見たくない人がいれば、次の章はこちらをクリックしてください。

 

 

 

天国はまだ遠くのオススメポイント④ 私の居場所

居場所

”居場所”こそ『天国はまだ遠く』の核となるテーマだと個人的には思っています。

千鶴は田舎生活を満喫しつつも、次第にこのように思うようになります。

ここにはたくさんの星、たくさんの木、山に海に風がある。それに、隣には田村さんもいる。今、私はたくさんのすてきなものに囲まれている。
でも、寂しかった。すてきなものがいくらたくさんあっても、ここには自分の居場所がない。するべきことがここにはない。だから悲しかった。

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

何日もこの土地で暮らしていく中で、楽しさを感じつつも、自分がいるべき場所じゃないと本能的に悟ったようです。

 

じゃあこれまで暮らして来た場所こそが自分の場所なの?と聞かれたら、一概にイエスとは言えません。現に、千鶴はこうも思っています。

都会に戻ったからってするべきことがあるわけじゃない。やりたいこともない。存在の意義なんて、結局どこへ行ったって、わからないのかもしれない。

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

どこが自分の居場所かなんて、結局誰にも分からないんです。そもそも答えのない問いですからね。

だからこそ、自分がどう思うかが大事です。
自分が納得できてさえいれば、そこは自分の居場所になり得ると私は思います。

 

先ほどの千鶴の思いは、あえて途中までを抜粋しました。
フルで記載するとこのようになります。

都会に戻ったからってするべきことがあるわけじゃない。やりたいこともない。存在の意義なんて、結局どこへ行ったって、わからないのかもしれない。
けれど、それに近付こうとしないといけない気はする。ここで暮らすのは、たぶん違う。ここには私の日常はない。ここにいてはだめなのだ。

出典:『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ

千鶴は正解のない問いの中で、自分なりの答えを見つけ出したんだと思います。
もちろん、これは明確な答えではありません。
でも、次に進むには十分なものであったと私は思います。

天国はまだ遠く/瀬尾まいこ 感想・評価 まとめ

死にたい気持ちを抱えている人、苦しい想いをしている人、ぜひ読んでください。

理由は、さくっと読めて、共感できて、この本をきっかけに「死ぬのはやめようかな」と思ってほしいからです。

生きてて良かった、って思える日が必ず来るとは言い切れません。
でも、生きなきゃ、そうは思えませんからね。

それと、はじめから「生きよう」って強く思う必要は、まずはないと思います。
まずは「死ぬのはやめよう」と思えるだけで十分です

千鶴のように、まずは陸地で活力を整えてから、時が来たら、海に出ればいいんです。

だから一緒に一歩ずつ頑張りましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!